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皆さんこんにちわ!広告代理店をやっています!メルマガ運用チームです!
最近、企業のブランディングについて考える機会が増えていて、改めてデービッド・アーカーの『ブランド論』を読み返しています。
「ブランド」と聞くと、ロゴやデザイン、高級な商品などをイメージする方も多いと思います。ただ、マーケティングにおけるブランドは、単に見た目を整えることではありません。ある商品や会社について、「この会社なら安心できる」「このブランドの商品が好き」「少し高くてもここから買いたい」と顧客に思ってもらえる状態をつくっていくことも、ブランドづくりの重要な役割です。
そのブランド研究で非常に有名な人物の一人が、デービッド・アーカーです。アーカーは、ブランドの価値を考えるうえで「顧客がそのブランドから何を得ているのか」を考えることが重要だとしています。
そこで出てくる多数のワードの中の一つとして「便益」という考え方があります。
それが、
・情緒的便益
・自己表現便益
・社会的便益
なのですが、言葉だけを見ると少し難しく感じますが、考え方自体は非常にシンプルです。今回はマーケティングやブランドについて事前知識がない方でも理解できるように、そもそも「便益とは何なのか?」というところから順番に解説してみます。
▼そもそも「便益」とは何なのか?
まず最初に、「便益」という言葉から整理します。
マーケティングにおける便益とは、ものすごく簡単に言えば、
【その商品やサービスを買うことで、顧客が得られる価値】
例えば車を買うとします。車を買えば、自宅から会社へ移動したり、家族で旅行へ行ったりできます。つまり「人や荷物を目的地まで運べる」という価値があります。
ホテルであれば、「宿泊できる」「シャワーを浴びられる」「ベッドで眠れる」という価値があります。パソコンなら「文章を書ける」「インターネットを使える」「仕事ができる」といった価値があります。
このような、商品やサービスそのものの性能や機能から直接得られる価値を「機能的便益」と考えます。
ここまでは比較的分かりやすいと思います。
しかし、実際の買い物を思い浮かべてみると、人間は機能だけで商品を選んでいるわけではありません。
例えば腕時計の一番基本的な機能は「時間を確認すること」です。それだけが目的なら、数千円の時計でも十分ですし、スマートフォンを見れば時間は分かります。それでも数十万円、場合によっては数百万円する時計を買う人がいます。
車も同じです。どのメーカーの車でも基本的には目的地まで移動できます。それでもトヨタを選ぶ人もいれば、BMWを選ぶ人も、ポルシェを選ぶ人もいます。
コーヒーもコンビニで買えますが、わざわざお気に入りのカフェへ行く人がいます。
つまり、人間が商品やブランドから得ている価値には、「便利」「速い」「安い」といった機能以外のものも存在するわけです。
【情緒的便益・自己表現便益・社会的便益】
▼情緒的便益とは「それを使うと、どんな気持ちになるか」
まず「情緒的便益」から説明します。
情緒的便益とは、
【その商品やブランドを買ったり使ったりすることで得られる感情的な価値】
例えばホテルを考えてみましょう。
ホテルの機能だけを考えれば、「寝る場所を提供してくれる施設」です。しかし、旅行で少し良いホテルに泊まったとき、私たちが得ている価値は単に「眠れる」ということだけではありません。
部屋に入った瞬間に「すごい」とワクワクしたり、日常から離れてリラックスしたり、「今日は自分へのご褒美だ」と感じたり、丁寧な接客を受けて大切に扱われていると感じたりします。
これらはホテルの部屋の広さやベッドの性能そのものではなく、そのサービスを利用したことによって生まれた「感情」です。
この感情まで含めて、顧客は商品やサービスの価値を受け取っています。
車でも同じです。「移動できる」という機能に加えて、運転することそのものが楽しい、安心して家族を乗せられる、アクセルを踏んだときに高揚する、駐車場に停まっている車を見るだけで満足するといった感情があります。
つまりブランドは、商品そのものだけではなく、
【その商品を使ったときに生まれる気持ち】
まで提供しているということです。
▼なぜ「感情」がブランドにとって重要なのか?
では、なぜ情緒的便益がブランドにとって重要なのでしょうか。
一つの理由は、商品の機能だけで差別化し続けることが難しいからです。
例えばスマートフォンで「バッテリーが2時間長い」という特徴を打ち出したとしても、競合メーカーが技術開発を進めれば、数年後には同じような性能の商品が出てくるかもしれません。
「処理速度が20%速い」「価格が1,000円安い」「容量が10%多い」といった違いも重要ではありますが、競合企業が追いついてくる可能性があります。
一方で、「このブランドなら安心する」「このお店に行くと落ち着く」「新商品を見るとなぜかワクワクする」といった感情は、スペック表をコピーするようには簡単に真似できません。
なぜなら、その感情は一回の広告だけで作られるものではなく、商品、デザイン、広告、接客、Webサイト、店舗、購入後の体験など、長期間にわたるさまざまな経験の積み重ねによって形成されるからです。
言い換えると、
【ブランドは商品を売っているだけではなく、感情も提供している】
▼自己表現便益とは「そのブランドを通じて、どんな自分でいられるか」
次が「自己表現便益」です。
自己表現便益とは、
【商品やブランドを使うことで、自分がどんな人間なのかを表現できる価値】
少し抽象的なので、洋服を例にすると分かりやすいと思います。
服の基本的な機能は、身体を守ったり、寒さを防いだりすることです。しかし、私たちは服を選ぶときに「寒くなければ何でもいい」と考えているわけではありません。
シンプルな服を好む人もいれば、派手な服が好きな人もいます。高級ブランドを選ぶ人もいれば、ブランド名が目立たない服を好む人もいます。
その背景には、「大人っぽく見られたい」「センスの良い人でいたい」「流行を追いかけるより、自分らしい格好をしたい」「環境に配慮した商品を選ぶ人でありたい」といった自己イメージがあります。
つまり商品を選ぶ行為そのものが、
【私はこういう人間です】
という自己表現になることがあります。
これが自己表現便益です。
▼例えばスターバックスやAppleで考えると分かりやすい
例えばスターバックスを考えてみます。
コーヒーそのものの機能だけで考えると、「飲み物を飲める」「カフェインを摂取できる」といったものになります。ただ、実際にスターバックスを利用する人の中には、「カフェで仕事をする自分」「コーヒーを飲みながら読書する自分」「少し丁寧な時間を過ごしている自分」といった自己イメージを感じている人もいるでしょう。
もちろん、スターバックスを利用する全員がそう考えているという意味ではありません。
重要なのは、
【ブランドには、その人が自分自身をどう捉えるかに影響を与える力がある】
ということです。
Appleも分かりやすい例です。
MacBookはもちろんパソコンなので、メールを送ったり、資料を作ったり、動画を編集したりするための道具です。一方で、人によってはApple製品を使うことと「クリエイティブな仕事をする人」「デザインや美しさを大切にする人」といった自己イメージが結びついていることがあります。
つまり、商品そのものが「自分はこういう人間である」という自己認識の一部になるわけです。
▼情緒的便益と自己表現便益は何が違うのか?
ここは最初に勉強すると少し混乱しやすいところです。
シンプルに整理すると、
【情緒的便益=その商品によって、自分がどう感じるか】
【自己表現便益=その商品によって、自分をどう表現できるか】
という違いです。
例えば高級時計を購入したとします。
時計を見るたびに「嬉しい」「仕事を頑張ってきてよかった」「良いものを買えて満足している」と感じるのであれば、これは情緒的便益です。
一方で、「仕事で成功している人間でありたい」「ものにこだわりを持つ人でいたい」「流行ではなく長く使えるものを選ぶ人でありたい」という自己イメージにつながっているのであれば、こちらは自己表現便益です。
もちろん、実際の購買行動では一つだけが存在するわけではありません。「持っていて嬉しい」という感情と、「この商品を選ぶ自分が好き」という自己表現が同時に存在することもあります。
むしろ強いブランドほど、
【機能+感情+自己イメージ】
が重なっていることが多いと考えたほうが自然です。
▼社会的便益とは「そのブランドを通じて、誰とつながれるか」
そして3つ目が「社会的便益」です。
社会的便益とは、
【ブランドを通じて、他の人や集団とのつながりを得られる価値】
人間は一人だけで生活しているわけではありません。家族、友人、会社、地域、趣味の仲間など、さまざまな集団に所属しながら暮らしています。
ブランドが、その人と他の人を結びつける役割を果たすことがあります。
分かりやすいのがスポーツチームです。
サッカーチームのユニフォームだけを商品として見れば、衣服の一種です。しかし、同じチームのユニフォームを着た何万人もの人がスタジアムへ集まり、一緒に応援すると、「自分たちは同じチームを応援している仲間だ」という一体感が生まれます。
この場合、顧客が得ている価値は単に「服を着られる」ことではありません。
【同じ価値観や興味を持つ人たちの一員になれる】
という価値があります。
これが社会的便益です。
▼ブランドがコミュニティを作ることもある
社会的便益は、スポーツだけの話ではありません。
バイク、自動車、アウトドア、ファッション、ゲーム、音楽など、さまざまなジャンルでブランドを中心としたコミュニティが生まれています。
同じブランドの商品を持っていることがきっかけで会話が生まれたり、イベントで交流したり、SNS上で情報交換したりすることがあります。
つまり、
【商品を購入した結果、人とのつながりまで生まれる】
わけです。
現在はSNSがあるので、こうした社会的便益はさらに分かりやすくなっています。商品を購入してSNSへ投稿し、同じ商品やブランドが好きな人から反応をもらい、フォローし合い、イベントへ参加する。そして、そこで新しい人間関係ができる。
こうした経験が積み重なれば、「このブランドの商品が好き」というだけでなく、「このブランドを中心に存在している世界が好き」という状態にまで発展する可能性があります。
ブランドへの愛着が非常に強くなる理由の一つです。
▼4つの便益を一つの商品で整理してみる
ここまでの話を、一つの商品で整理してみましょう。
例えばアウトドアブランドのジャケットを購入するとします。
機能的便益
「雨を防げる」「暖かい」「軽い」「丈夫」といった商品としての性能です。
情緒的便益
「これを着てキャンプへ行くとワクワクする」「良い道具を持っていると安心する」といった感情です。
自己表現便益
「アウトドアを楽しむ人でありたい」「自然を大切にする人間でありたい」「道具にこだわる人でいたい」といった自己イメージです。
社会的便益
「キャンプ仲間との会話が生まれる」「同じブランドが好きな人とつながれる」といった人間関係の価値です。
つまり、一着のジャケットでも顧客が受け取っている価値は一つではありません。
【何ができるか】
【どう感じるか】
【どんな自分でいられるか】
【誰とつながれるか】
という複数の価値が重なっています。
この視点を持つと、「商品価値=スペックや価格」という見方からかなり世界が広がります。
▼この考え方は広告を作るときにも非常に使いやすい
この4つの便益は、ブランド戦略だけでなく、実際の広告を考えるときにも使えます。
例えばジュエリーを販売するとします。
機能的便益だけを考えると、「K18を使用」「天然ダイヤモンド0.1ct」「送料無料」といった訴求になります。もちろん購入を検討している顧客にとって重要な情報です。
ただし、広告がそれだけだと、競合ブランドも同じような品質や価格を提示した瞬間に比較されやすくなります。
そこで情緒的便益から考えると、「身につけるたびに、少し気分が上がる」といった訴求が考えられます。
自己表現便益から考えるなら、「流行ではなく、自分らしいものを長く選ぶ」という方向が考えられます。
さらに社会的な価値を考えるなら、大切な人との関係や記念日、家族から受け継ぐ体験などを広告のテーマにすることもできます。
つまり、同じ商品でも、
【どの価値を顧客に伝えるのか】
によって広告の内容は大きく変わります。
これは広告クリエイティブを考えるときにかなり便利な考え方だと思います。
▼なぜ強いブランドは「機能」だけで終わらないのか
ここまでの話で一番重要なのは、機能的便益が不要だということではありません。
むしろ商品である以上、機能的便益は大前提です。
ジュエリーなら品質が必要です。ホテルなら快適に泊まれなければいけません。食品ならおいしくなければいけません。ECサイトなら商品がきちんと届かなければいけません。
問題は、
【機能的便益だけでブランドを作ろうとすること】
です。
機能だけで競争すると、より安い会社、より高性能な商品、似たような機能を持つ競合が登場した瞬間に比較されます。
だからブランドを作るのであれば、「この商品にはこんな性能があります」で終わるのではなく、「このブランドを使うとどんな気持ちになるのか」「このブランドを選ぶことでどんな自分でいられるのか」「このブランドを通じてどんな人たちとつながるのか」まで考える必要があります。
ブランドとは、商品のスペック表だけで形成されるものではないということです。
▼初心者なら、まずこの4つの質問から考えてみる
ここまで読むと少し難しく感じるかもしれませんが、実際にブランドや広告を考えるときには、4つの質問に置き換えるとかなり分かりやすくなります。
①この商品は、顧客に何をしてくれるのか?
→ 機能的便益
②この商品を買ったり使ったりすると、顧客はどんな気持ちになるのか?
→ 情緒的便益
③この商品を選ぶことで、顧客はどんな自分でいられるのか?
→ 自己表現便益
④この商品やブランドを通じて、顧客は誰とつながれるのか?
→ 社会的便益
例えば新商品の広告を作るとき、いきなりキャッチコピーを考えるのではなく、まずこの4つを書き出してみます。
そうすると、「送料無料」「高品質」「今だけ10%OFF」といった商品条件だけではなく、もう一段深い広告アイデアが出てきやすくなります。
▼便益は企業側だけで考えず、実際の顧客に聞いてみる
もう一つ重要なのが、企業側だけで顧客の便益を決めつけないことです。
例えば企業側では、「この商品は性能が高いから売れている」と考えているかもしれません。しかし実際に顧客へ聞いてみると、「以前からこの会社を使っていて安心だから」という理由で選んでいる可能性があります。
企業は「デザインが評価されている」と考えていても、顧客は「このブランドの商品を持っている自分が好きだから買っている」のかもしれません。
だからこそ、購入してくれた顧客に「なぜこのブランドを選んだのか」「実際に使って何が良かったのか」「他の商品ではなく、なぜこれだったのか」「使っているとどんな気持ちになるのか」などを聞いてみることが非常に重要です。
ブランドの価値は企業側だけで決めるものではありません。
最終的には、
【顧客がそのブランドをどう感じているのか】
によって形成されます。
顧客の言葉を聞いてみると、企業側が気づいていなかった情緒的便益や自己表現便益、社会的便益が見つかることがあります。
【最後に|ブランドを見る4つの視点】
デービッド・アーカーのブランド論をかなり初心者向けに整理すると、商品やブランドから顧客が得る価値は、「性能が良い」「便利である」という機能だけではありません。
整理すると、
【機能的便益=何ができるか】
【情緒的便益=どう感じるか】
【自己表現便益=どんな自分でいられるか】
【社会的便益=誰とつながれるか】
と考えると分かりやすいと思います。
ブランドについて考えると、どうしても商品の品質、価格、性能などの「目に見えやすい部分」に意識が向きます。しかし、顧客があるブランドを長く好きになったり、多少価格が高くても選び続けたりする理由は、それだけではありません。
そのブランドを使ったときに感じる安心感やワクワク感。そのブランドを選ぶことで感じられる自分らしさ。そして、そのブランドを通じて生まれる人とのつながり。こうした「機能を超えた価値」まで考えることが、ブランドづくりでは重要なのだと思います。
広告を考えるときにも、「この商品の特徴は何か?」だけで終わらず、「顧客はそれによってどんな気持ちになるのか?」「どんな自分でいられるのか?」「誰とつながれるのか?」まで考えてみる。そうすることで、単純な価格やスペックの比較から少し離れ、そのブランドならではの広告やコミュニケーションを作りやすくなります。
私自身も広告運用だけではなく、今後よりブランド側の支援をしていくうえで、この4つの視点はかなり重要な基本フレームとして使っていきたいと思っています。
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