8.値引きをしてはいけないのではない。理由と条件を説明できることが重要「価格の一貫性」は、「永久に同じ価格」という意味ではないここまでの話を読むと、値引きや価格変更そのものを否定しているように感じるかもしれません。しかし、今回考えたいのは、価格を一切変えないことではなく、顧客が納得できる形で価格を決め、運用することです。 実務への応用として考えるなら、発注量が増えることで1件あたりの作業負担が減る場合、対応範囲を限定する場合、納期に余裕がある場合などは、異なる条件に応じて料金を変える方法が考えられます。商品であれば、旧モデルや展示品、季節の終了など、値下げの背景を説明できる場合もあるでしょう。 これらと、「相手が迷っているから、同じ内容のまま根拠なく金額を下げること」は、分けて考えられます。価格差に条件の違いが結びついていれば、顧客は判断しやすくなります。 また、価格を上げる場合にも、適用時期や対象、変更される内容を明確にすることが重要です。金額が変わらないことだけでなく、金額の決まり方や変更のルールがわかることも、一貫性のある運用として考えられます。 「安くしても売れる」と「安くしなければ売れない」を区別する本書では、顧客が喜んで定価で購入する商品やサービスに対しても、企業が無用な値引きをしてしまう問題が指摘されています。また、期待していた高品質の商品が突然大幅に値引きされると、顧客が何か問題があるのではないかと疑う場合についても触れられています。[2] ここから考えると、値下げを決める前に、「価格が、実際に購入を妨げている要因なのか」を確認したいところです。サービス内容が理解されていないのかもしれません。実績や提供体制に不安があるのかもしれません。必要な機能が足りないのかもしれません。申込方法がわかりにくいのかもしれません。 たとえば、契約後にどこまで対応してくれるかわからず迷っている顧客に、価格だけを下げたとしても、迷っている理由は残ります。反対に、対応内容が整理されて不安が解消すれば、値下げをしなくても判断してもらえる可能性があります。 値引きを否定するのではなく、値引きが解決する問題と、値引きでは解決しない問題を分ける。ここを整理しないまま価格を下げると、利益を減らしても、顧客の不満が解消されないことになりかねません。 10%の値下げでも、必要な販売量は10%増とは限らない価格を下げる判断では、収益面の確認も欠かせません。ここでは、仕組みを考えるための仮の数字を使います。 販売価格が1万円で、1件販売するごとに必要な変動費が6,000円だとします。この場合、1件あたり、売上から変動費を差し引いた金額は4,000円です。販売価格を10%下げて9,000円にし、変動費が変わらなければ、その金額は3,000円になります。 価格を下げた割合は10%ですが、1件あたりに残る金額は4,000円から3,000円に、25%減っています。固定費や販売構成が変わらないという前提でも、同じ金額を残すには、およそ3分の1多い販売量が必要になります。 さらに、増えた受注に対応するための採用や設備が必要なら、その費用も考えなければなりません。値下げによって問い合わせや受注が増えても、事業として残る利益が減るなら、その施策は見直す必要があります。 価格の強みは、顧客への魅力と企業の継続性が両立していることです。「売れたから成功」だけではなく、「約束した内容を提供し、適切な利益を残しながら続けられるか」まで見ることが重要です。 |